辻和美「光のかけら」

re-growrh2006-01-22

先日の美術館のレポート補足。
館林美術館で公開中。
入館料200円。

部屋の半分を使って展示されているのは、天井からワイヤーで吊り下げられた500個以上のガラス。
このガラスは涙の形をしている。
高さも距離も不規則に吊り下げられたこの涙のガラスは、一見無機質に見える。
しかし、その中に入って(間を歩くことは解禁されている)見回してみると光景は変わる。
始めの印象は、最近の映像でよく使われるスーパースローモーションみたいだ。
空から自分の上に、雨が降ってくる。
その瞬間を止める。
マトリックスで使ってた技法だ。
カメラは、そのまま360度回り込んで、空中で停止した雨の粒と、静止したままの自分を捉えている。

しかし、その雨が涙の形をしていることに気がつくと風景は変わってくる。
360度自分を取り囲む、空から降る涙の粒。
涙と涙と涙しかない。

一瞬、世界が切り替わる。
ガラスを見ながら、過去の涙の記憶が脳裏をめぐる。
幼かった自分の涙、人前にも関わらず彼女が流した涙、老人ホームで見かけたおばあさんの涙、映画でみた俳優の印象的な涙、いつかの喜びの涙。
そしてすぐ、日常に戻る。

これが正しい鑑賞の仕方かはわからないが、現代美術を見るとき、自分は「世界の見方を一瞬でも変えてくれたか」を一つの基準にしている。
その点、今回は楽しめました。
ということで、作家名を忘れないように、ここにメモして見ました。
(※涙の記憶に関する上の記述には一部、事実と反するものも混入しています)
(※画像は、別の展覧会のものをパクってきました。会場以外は大体同じです)