センチメンタル過剰

春が近づいている。
出会いと別れの季節だ。

俺は春が嫌いだ。

生暖かい空気もなんだか嫌だ。
卒業式で泣いたり、4月を迎えてウキウキしたりしている人を見るのも吐き気がする。

だから、春になると気分が沈む。



視点を変えてみよう。
嫌いは好きの裏返しともいう。
ほんとは、自分は春の持つ、そういう軽薄さに憧れているのかもしれない。
夏が持つ以上の、プラスチックみたいな猥雑さに憧れているのかもしれない。

でも、やっぱまだダメだ。
この緩い風にジンマシンがでる。

うむ、重症だ。



春で好きなのは、夕暮れ。
意味もなく切なくなる。

せつね〜。

そして、無性に焼き鳥が食べたくなる。
意味もなくビールが飲みたくなる。

だからせっせと飲み屋に向かう。
素晴らしい夕暮れに、帰宅せねばならないときは、
本気で口惜しくなる。

もちろんこんな気持ちはあまり理解されない。
共感されても困る気がする。

でも、
「せつないね。夕暮れにはビール飲みたいね。」
と言われたら、一発で恋に落ちるかもしれない。

しかし、それはあまり幸福な恋の形とはいえない気もする。

ということで、
今年もひとり、
このいびつな喜びを胸に秘し、
生暖かい春を乗り切ることにする。

感傷嫌いのセンチメンタル過剰。



と、レディオヘッドの「ヘイル・トゥ・シーフ」を聞きながら思った。