エリートのつくり方―グランド・ゼコールの社会学 (ちくま新書)」柏倉康夫
大学時代にならっている教授がでてくるというので買った本。
本棚の整理をしていたら目に付いたのでついつい読んでしまった。
内容はフランスの教育システムの話。
特にグラン・ゼコールと呼ばれるエリート養成機関の話。
やはり、おもしろかったのはサルトルとニザンの学生時代の話。
読んでいて印象に残ったのは、さすがに一握りのエリート養成機関だけあって、日本の受験勉強以上に猛烈な受験勉強をしているという事実。
ただし、日本の場合は暗記中心に対し、フランスのそれは思考力中心。
例えば、日本のセンター試験にあたるバカロレアでの哲学記述問題はこんな感じ。

以下の3問から一つ選び4時間で記述。
・幻想のない情熱というのはありうるか。
・すべてのことは正当化できるか。
ベルグソンの言語の機能に関するテキストについて注釈せよ。

模範解答をみると哲学の知識、判断力、思考力を要求されている。
教育の特色が違うとはいえ、日本の受験生には厳しいと思う。

横道に逸れた。
で、感想は。
やっぱりよく勉強しなきゃだめだ。
基礎力をつけよう。



青ひげ (ハヤカワ文庫SF)カート・ヴォネガット
こちらも本段整理中に発見。
10年ぶりくらいに再読。
現代美術画家だった老人の回想録の形をとって縦横無尽の物語が展開される。
やはり面白い。
読んでいるうちに、自分が主人公に同化し、ペシミストの老人になったきぶんがしてくる。
あぁ、十年前も、この部屋で、孤独に囲まれながら読んでたな、と。
恐るべきは小説のちからであり、形式のちからだ。
本当はそんなことを思っていないのに、自分が同化しているばかりに、ペシミスティックで、孤独に苦しむ言葉がすらすらと自分の口から出てくる。
それだけ、のめりこんでしまったということか。

しかし、一度読んでいるはずなのにまったく話を覚えていなかった。
覚えていたのはラストのどんでん返しだけ。
というか、当時は現代美術なんてまったく知らなかったはずなのによく読めたなぁ。
ポロックすらしらなかったのに。
今読んでみると、10年前なら絶対わからなかったはずの人名や固有名詞がポロポロでてくる。どうにか現代美術の話もついていけるし。
ともあれ、ヴォネガットは面白かった。

いちおう、メモ。
村上春樹サリン事件を扱ったノンフィクション「アンダーグラウンド (講談社文庫)」のタイトルは、P51に出てくるサーシ・バーマン(筆名ポリー・マディス)が書いた、大量虐殺を生き延びた両親から生まれた子供たちのことを書いた小説「アンダーグラウンド」から頂戴しているのではないか。

どうでもよいメモ。
サーシ・バーマンは踊るのが大好きだった。
「ダンス、ダンス、ダンス」という行もでてくる。

ついでにメモ。
村上春樹作品に出てくる典型的な男性:とくに自分から大きなアクションを起こさないがいろいろ考えている、と女性:積極的に絡んでくる行動の考えが読めない。
この構図は、「青ひげ」のラボー・カラベキアンとサーシ・バーマンの構図によく似ている気がする。春樹さんも影響を受けたんだろうか。

追記
なんとヴォネガットは、現在画家をしているらしい。
http://www.vonnegut.com/index.asp